「殉教者ソレイマニ作戦」への反撃にトランプ大統領が慎重な態度なのは何故か?

米首都ワシントンのホワイトハウスで会見するドナルド・トランプ大統領(2020年1月8日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP

イランがイラクの米軍駐留基地をミサイルで攻撃したことを受けて急落した日経平均株価であるが、今日になって上昇トレンドへ復帰した。

悪材料が出た場合には一端は急落するが、その翌日になって更に下落をするようならば、要注意となり、反発するようならば市場心理として「材料出尽くし」か「好転」と見ていることになる。

トランプ氏、対イラン戦争回避の姿勢 基地攻撃で死者出ず

2020年1月9日 7:33 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 イラン イラク 中東・北アフリカ ]
米首都ワシントンのホワイトハウスで会見するドナルド・トランプ大統領(2020年1月8日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP

米首都ワシントンのホワイトハウスで会見するドナルド・トランプ大統領(2020年1月8日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP

【1月9日 AFP】(更新)イランがイラクの米軍駐留基地をミサイルで攻撃したことを受けて、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は8日、ホワイトハウス(White House)で演説し、攻撃により米国人やイラク人の死者は出ず、イランは「身を引いているようだ」と述べて、同国との戦争を回避する姿勢を示した。

トランプ氏は「わが国の兵士は全員無事であり、われわれの軍事基地における被害は最小限にとどまった。われらが偉大なる米軍は、何に対しても備えができている」と述べた。

~以下省略~

参照元:AFP BB NEWS

 

イランと米国でここまで違う被害状況の説明

個人投資家は今回の中東危機を冷静に見ていたことが分かる。

イラン政府とトランプ大統領の発表が余りに乖離しているのだ。

イランが「イラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の『米国のテロリスト』が死亡した」と報じているのに対して、トランプ大統領は「万事順調だ」と応えて被害を少なく見せている。

報道技術が格段に発達している米国の発表の方が真実に近いと考えれば、イランの公式発表はイラン国内向けの反米世論を意識したガス抜きであることが想定されるのである。

トランプ大統領は当初「イラン国内の52施設を攻撃対象に選定済み」として、何らかの切っ掛けを待っていたので、イラン側からの「殉教者ソレイマニ作戦」と銘打ったミサイル攻撃は願ったり叶ったりのはずであった。

一方で「80対ゼロ」の被害認識があり、また一方では「報復反撃の戦火拡大はしない」というトランプ大統領の言葉尻からは裏側で進められていた外交交渉の成果を予感させた。

イランと米国は裏ルートで接近しているのでは?

イレギュラーで矛盾した米国トランプ大統領の現状を説明するには、ミサイル攻撃を受ける前か、受けた直後に、イランから「今回のミサイル攻撃はイラン国内の反米派を抑えるために止むを得ず実施したが、イランとしては戦火拡大を考えてはいない」という趣旨の言葉をトランプ大統領に伝えた可能性が考えられる。

「反米」一色に染まったイランの大衆であるが、「殉教者ソレイマニ作戦」は間違いなく大きなカタルシスとなったことは間違いない。

米国からの「報復の報復」という激しく致命的な猛反撃を覚悟していたイラン大衆は安心して勝利に酔った状態になり、怒り狂っていた「反米」の矛先も若干肩透かしを食らうかも知れない。

イラン国内の世俗主義者と原理主義者の攻防

イラン政府は最高指導者ハメネイ師のイスラム原理主義に近いグループとザリフ外相に見られるような世俗主義に基づいた政権運営を考える2つのグループから出来ている。

軍部もイスラム共和国軍と革命防衛隊という2つの組織に分裂したまま存在している。

ドローンによって暗殺されたソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊のエリート部隊「コッズ部隊」を率いており、国内的には英雄と見做されていたが、国外テロ組織と気脈を通じて、シーア派民兵のイラクでの訓練などに関与していた。

米国からすれば裏側でテロ組織を操る邪悪な存在だったのであり、今回もイラク国内で民兵組織によるテロの作戦会議に参加する途中であった。

ソレイマニ司令官の死亡はイラン国内の原理主義グループに打撃となるが、世俗主義グループにとっては目の上のたん瘤が無くなった程度の認識かも知れない。

米国が望むイランの革命政権の崩壊

中東イランは極東の北朝鮮同様に米国にとっては身体に纏わりついた蛭のような厄介者であるが、イラン革命前までは親米のパーレビ国王支配下にある同盟国で、現在のサウジアラビアと同様であった。

米軍の絶対的武力で侵攻しても、イラクやトルコなどに見られるように、民衆に反米意識を植え付けるだけに終わるため、米国としてはイラン国内に反原理主義革命の政変が起こるのを待つか、あるいは現政権との平和共存を図る以外ない。

米国留学と国連大使を経験したザリフ外相がハメネイ師のイスラム原理主義に反旗を翻す可能性があり、米軍情報機関も「九回裏の大逆転」を狙って仕掛けたのかも知れない。

東京株式市場はトランプ大統領の和平路線への転換を展望

一時は第三次世界大戦の引き金となるかと心配されたが、拍子抜けする結果となっている。

米国ではシェールオイルが既に米原油生産の7割を占めているので、原油価格の高騰も原油依存の高い日本とは違って気にする必要がない。

個人投資家は中東地域の和平への展望を見込みながら、本日は大幅な反騰を演じてみせた。

日経平225日足チャート2020年1月9日(木)

日経平225日足チャート2020年1月9日(木)

株式相場ではトランプ大統領が対イラン戦線拡大をしないで、経済制裁の強化のみに終えるだろうことを予想している。

しかしイスラエルを始めとした中東諸国はイスラム教シーア派やスンニ派、ユダヤ教徒あるいはキリスト教徒と複雑に入り乱れて争っているので、国同士の戦争は難しい時代に入っているものの国際テロ組織は自らの存在感を過剰にアピールする恐れもあり、予断を許さない。

また、大統領選挙を控えたトランプ大統領が自国世論の動向を見て、いつリスキーなディールに打って出るかは分からず、一瞬先は闇の中であることは確かだ。