旧村上ファンドが仕掛けた東芝機械へのTOBによる敵対的買収は成功するか?・・

「N高」生徒を前に授業する投資家の村上世彰(よしあき)氏

経営難となって支援を検討している企業が最終的に当てにするのが、TOB(ティー・オウ・ビー)である。

一般的な上場企業では対象となった企業の株式を東京株式市場などの公開の場で売買しているが、TOBは株式市場を介さずに、不特定多数の株主から大量に株式を取得する買収手法となる。

TOBはTake Over Bidの省略形で、米国では「テンダー・オファー」と呼ばれているが、言葉の違いだけである。

企業を経営する役員陣にとって、利払いのいらない新たな資金獲得源としてTOBは有効であるが、経営責任を問われる敵対的な買収となることも考えられるので、一概に喜んではいられない。

TOBは経営陣にとっては会社救済の「ホワイトナイト」を迎えるか、あるいは経営権を奪われる買収の一環となるかという両刃の剣である。

旧村上ファンドが計画する東芝機械のTOB

日本のTOBとして話題になったのが2006年1月16日に起きた、「ライブドア事件」である。

ライブドアでは違法に吊り上げた自己株式により、様々な企業へTOBをしかけた挙句、代表取締役社長の堀江貴文氏が逮捕された。

 

堀江貴文氏

堀江貴文氏 参照元:HORIEMON.COM

 

ライブドア株というのは粉飾決算をされていて、後から考えればそれ程の中身の無い株式だったが、当時は一般大衆が熱狂的に買い漁ったために株価が高騰しており、ついにはマスメディアの代表であったニッポン放送の買収にまで発展したことから東京地検特捜部が異例の逮捕に踏み切っている。

さらにニッポン放送株大量取得問題で村上世彰氏が重要な役割を果たしていたことに注目して、同年6月5日に東京地検特捜部は証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で旧村上ファンドの代表であった村上氏を逮捕した。

 

「N高」生徒を前に授業する投資家の村上世彰(よしあき)氏

「N高」生徒を前に授業する投資家の村上世彰(よしあき)氏 参照元:JCASTニュース

 

彼らのように六本木ヒルズに居住して、ITベンチャーや投資ファンドに関わっていた、いわゆる「ヒルズ族」の凋落の始まりでもあった。

われわれのような個人投資家にとっては、いわば両人とも憧れに近い人たちだったが、「お上に逆らうと痛い目にあう」という教訓となった事件であった。

忘れかけていた「旧村上ファンド」の名前を思い起こさせる報道があり、個人投資家は久しぶりの興奮に包まれている。

旧村上ファンド系、東芝機械にTOB通告

2020/1/17 22:03

東芝機械は17日、旧村上ファンド系のオフィスサポート(東京・渋谷)から東芝機械株へのTOB(株式公開買い付け)を実施する通告を受けたと発表した。オフィスサポートとその共同保有者は東芝機械株の11.49%を保有しているという。東芝機械は対応策として、条件次第では新株予約権を他の株主に無償で割り当てる対抗措置を打ち出すことを決めた。

~以下省略~

参照元:日本経済新聞インターネット版

 

「敵対的買収」によるTOBが被買収企業に与える影響

報道によると、明らかにこのTOBは「敵対的買収」にあたるので、東芝機械の経営陣はTOB成功の暁には自分たちの首が飛んでしまうことを恐れて防衛体制に入っている。

「ポイズンピル」と呼ばれる、新株予約権を株主に無償で割り当て発行することにより、総発行株式数を水増しして、買収の旨味を打ち消す方法をとるようだ。

買収を計画する側にとっては、経営権の掌握が可能となる50%の株式保有を困難にさせることになる。

他に、経営陣の退職金を巨額に設定し、買収に要する金額をさらに引き上げて意欲を削ぐ防衛策である「ゴールデンパラシュート」という裏技も存在する。

いずれにせよ「敵対的買収」は相場の上昇をもたらす可能性が大きくなる。

個人投資家にとっては滅多におめにかかれない実際の事件が現在進行形で動くことになり、面白い経済小説を読んでいるようなものだ。

「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるが、今も昔も「相場の喧嘩は投資家の楽しみ」であることは間違いない。